イタリア・ローマ

ローマ レストラン


1983年の夏、ヨーロッパは猛暑でした。

湿度の高い日本とちがって、気温が上がってもカラッとしているヨーロッパではエアーコンディショナーの設備のある乗り物、建物が驚くほど少なく、ローマ郊外のレオナルド・ダ・ヴィンチ空港から市内へ向かうリムジンバスの中は蒸し風呂のようです。
日中40度を超える暑さに身動きがとれず、「世界のローマ」を訪ねたのにもかかわらず市内観光をする気力もなく夜行列車に乗るためにローマ・テルミニ駅前の大きな公園の木陰のベンチでボーっとしていると公園には「すいか売り」のおじさんが水で冷やしたすいかの切り売りをしていて1切れ30円くらいだったでしょうか。日本のすいかとはちょっとちがっていましたが、乾ききったのどを潤してくれました。


元気がでてきたので駅の周辺をお散歩していたら、素敵なレストランをみつけました。正面玄関の大きなテーブルにたくさんのフルーツや魚介、野菜がディスプレイしてあってその美しさに見とれていると中から親切なボーイさんがでてきて「とても美味しい食事ができますよ、いかがですか」と声をかけてくれました。


当時まだ学生でしたし、ジーンズ姿で入るには気が引けましたが思い切って中へ。そこで何を食べたか、飲んだかも覚えていないのですが、それまでの人生で体験したことのない美味しさを味わい、「一度の食事がこんなに心を豊かにしてくれるものなのか」という満ち足りた気持ちで夜行列車に乗り込むことができました。あのレストランにまたいってみたいものです。