ドイツ ミュンヘン

ケストナー

1983年7月29日。日本を出発して2週間近くがすぎていました。


猛暑の中、重いリュックサックを背負っての一人旅に疲れが出たのかミュンヘンユースホステルに宿泊中に熱がでてしまいました。旅先で体調を崩してしまうのはとても心細いものです。たとえ連泊で申し込んでいても日中10時から5時の間はユース内に滞在できないことを知って余計にがっかり。しかし気を取り直して、ミュンヘンを訪ねた目的を達するべく外出しました。


その日7月29日は作家エーリッヒ・ケストナーの9回目の命日で彼が晩年をすごした家には長く生活をともにしていた女性編集者がまだ暮らしているはずでした。ミュンヘン郊外のシュワービング地区と呼ばれる芸術家が多く暮らす閑静なエリアを目指して出かけたのですが土地勘がない上に体調がすぐれず、目的地へ行くことをあきらめかかって公園のベンチで横になっていたら、公園整備の車に乗ったおじさん2人が「こんなところで何しているの?」と声をかけてくれました。「ここに行きたいの」と住所をみせると「通り道だから乗せていってあげよう。」と住所まで連れて行ってくれたのです。

2階建ての住み心地のよさそうな家の入り口には濃いピンクのあじさいが咲いていて作家が晩年をすごした時間にひとり思いを馳せていたら中から年配の女性が出てきて驚きました。彼女はこの家のお手伝いさんで「マダムは今不在です。お墓参りに行っています。」と教えてくれました。私はお墓の場所を教えてもらい色とりどりのお花で溢れていたケストナーのお墓にお参りができました。
※上記写真は、筆者が23年前に撮影したもの

飛ぶ教室 (少年少女世界文学館 15)

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